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日本俳優連合 アクション部会

コラムコラム

フルコンタクトアクション創世記 《高瀬将嗣》

もう30年以上前になりますが、私こと高瀬は先輩殺陣師たちからの怨嗟の嵐にまみれていました。
曰く「邪道アクション」「危険と迫力の履き違え」「匹夫の勇」などなど……。
なぜこんなに叩かれまくったかというと、担当した技斗シーンで実際にパンチやキックを当てたからです。

そう、「ビー・バップ・ハイ・スクール(昭和60年東映 那須博之監督)」がその作品でした。
実のところ、私は殺陣でも技斗でも当てないことこそ技術と思っており、当時教えていた俳優学校でもそう指導していたのですが、ある日生徒の一人が「どうして当てちゃいけないンですか」と生意気なことをヌカすので「あぶないからだよ」と答えると、逆に「あぶなくなきゃいいンですか」と切り返されたのです。

生意気な小僧め……とムカッ腹が立ちましたが、良く考えればそれも真理かなぁと思い直しました。
折も折、前述の「ビー・バップ〜」に付くことになりましたが、出演者は主演の仲村トオルをはじめ全員シロウト、それもほとんどが現役の不良(トオルさんはちがいます)。

九々はともかく三角比や微積分なンて異次元のことで、米国を本気でコメくにと読む連中ですからフレームがどうのカットがこうのと言っても始まりません。

さらには東大出の監督が「ビビットな青春群像を弾けるテンションで具現化する」と演出した日にゃ、全員が遠い目をして沈黙しました。

キャメラに対して打突は被せるように放つとか、縦位置以外は成立しないとかのセオリーを説明しても困惑顔で唸る始末ですから、こっちもどうやって技斗を振付けたらいいのか頭を抱えたのは当然です。

その時、前述した生意気な生徒の駁論が蘇りました。
「あぶなくなきゃいいんですか」
そうか、安全なアクションを付けようとしていたからいけなかったのか……。
それなら殴ったり蹴ったりしても大丈夫な準備をすればいいのか……。

さすがに顔は「被せる打突」セオリーを守りましたが、首から下は腕と足には空手用のサポーター、股間には日本拳法の股当て、胴は当時の空手プロテクターでは厚みがありすぎるため、少年野球の捕手用プロテクターを用いる万端の対策で臨み、実際にバカスカ当てさせたのです。

ラッキーだったのは衣装が中ランにボンタンの上下だったので、まったく防具が目立ちませんでした。

ただ、乱立ちではもともと不良ですから、「オレより強く殴った」「いやお前のほうがたくさん殴った」というヒジョーに次元の低いキッカケにより、そこかしこでマジのドツキ合いになったのは否めません。まぁ、止めませんでしたが。

そんなこんなで「フルコンタクトアクション」は今やスタンダードとなり、私を人でなしと罵る声は聞かれなくなったのでした(笑)。


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